アリスのオリジナルアルバム、アリスVとアリスW.1973年、1975年に発売されたものです。僕が5歳、7歳のときということですね。中学の頃に散々聞いたアルバムで、まだまだアリスのヒット曲が無かった頃のアルバムです。続くアリスXには、『今はもうだれも』『帰らざる日々』『遠くで汽笛を聞きながら』というヒット曲が含まれています。
しかもアリスVはレコードが売れないからと外部の作家の曲がアルバムの半数を占めていた異色アルバム。90年代にCDで再販されて、1500円くらいで売られていたから油断していました。今は売ってないんですね。
アリスVから『走馬燈』、アリスWから『想春賦』。想春賦にはギターで高中正義、コーラスにオフコースが参加していたようです。
ヒット曲がまったくないアルバムですが、なんとなく昔から(30年前から)好きな歌です。
走馬燈
谷村新司作詩/堀内孝雄作曲/青木望編曲
夏の日のざわめきは
鈴虫の音にかきけされ
湯上りの髪に手をやれば
潮の香りも今はなく
ただ年老いたと思うのみ
生きてゆくにはあまりにも
恋多過ぎしと人の言う
悔いなき道を歩めども
恋多過ぎしと人の言う
まわり来る日々懐かしく
めぐり来る日々美しき
ああ肌の色はうすれゆく
想春賦
矢沢透作詩・作曲/青木望編曲
初めて出会った時のことで
今でもハッキリ覚えてる
遠くの時計台眠そうに時を打つ昼下がり
あなたは春風に髪をまかせながら
しみとおるような笑顔で僕を見てた
これからの幸せな日々を約束するかのように
暮し始めの二人にとって苦しみや貧しさなど
身を寄せ合えばぬくもりの中笑いながら溶け落ち
たちこめる幸せの香りあなたの遥かな優しさ
それに甘えて僕は夢ばかり追いかけた
さきのことも振り返ることも過ぎゆく時さえ忘れて
共に歩むことは出来ず
待つには大人になりすぎて
あなたの寂しい笑顔が
夏の陽ざしにグルグル回り
静かに秋は広がると想い出だけがふるえていた
なんというのだろう。アリスは音楽のジャンルが不明なグループですね。一応フォークグループらしい感じですが、フォークというと、ギターをかき鳴らしながら何か訴えるようなのと南こうせつのような四畳半フォークとなりますが、あまりそういう感じもないし(そういう曲もあるけど)、ジャンルが広すぎるのがアリス、言ってみれば音楽のジャンル名が『アリス』なのかもしれません。
チャンピオンなんかを知ってしまうと、ゆわいるロックを聞いてもなんだか大したことのない騒々しいだけの音楽に聞こえてしまったり、サウンド重視と言われるような人たちの歌がとっても軽い(存在が軽いという意味)感じてしまいます。だとするとアリスはロックバンド?というわけでもないですし、本当に不思議なスタンスのグループですね。
『想春賦』を作った矢沢透の名前は知らない人が多いかもしれないですね。知っている人は大体僕の年齢以上の方だと思います。アリスのドラム(パーカッション)担当で、元々はR&B好きな人なんですね。でもこのキンちゃん(矢沢透のこと)の作る曲は少ないのですが、意外と名作・傑作が多いと思っています。シングルA面になったことはないのですが、谷村新司と堀内孝雄の二枚看板というかボーカルに挟まれて目立たない存在だったかもしれませんが、作る曲はいいんです。でも本人が歌うとちょっと問題がある(笑)ので、谷村&堀内のどちらかがボーカルをすることが多いんですけどね。
走馬燈の、歌詞なんて…多分当時アリスのメンバーも30歳くらいですよね。なんかこうとっても中年の哀愁が漂うような、それでいてさわやかな雰囲気というのがあります。それを中学のときに『湯上りの髪に手をやれば潮の香りは今はなく、ただ年老いたと思うのみ』なんていう歌詞に聞き入っていたわけなんですけどね。
懐かしさもあるけど、古びれてない…もともとそんな年代の歌だった(笑)という感じです。 |