Gacktには興味ないけれど、ガンダムが好きだというのは好感があるね。毎日新聞から。
人気アニメ「機動戦士ガンダム」の劇場版3部作の主題歌「砂の十字架」、「哀 戦士」、「めぐりあい」の3曲をフルアレンジし、自身が提供した劇場版「機動戦士Zガンダム」3部作の主題歌を加えたアルバム「0079−0088」を19日発売したGacktさん。「命を懸けて臨んだ」と語るGacktさんにガンダムへの思いを聞いた。【西村綾乃】
Gacktさんは、人気キャラ、シャア・アズナブルのせりふはすべて覚えているというガンダムフリークだ。「ファーストガンダムの楽曲をアレンジして欲しい」と話を持ちかけられ、「正直迷った」と言う。それは「好きなものだから仕事にしたくない」という思いがあったから。
「楽曲を聴き込み、作品と向き合った」。作っては直しの作業は4カ月にものぼり「自分が10年間音楽制作をやってきた中で、最も時間を費やした」という。「ガンダムファン、僕のファン、そして作詞、作曲者……。応えなくてはいけない人がたくさんいる。みんなを裏切れない。命を懸けないと、自分が好きだったものをすべて否定することになる」といい、「1対1で戦っている感じではなくて、周りを敵に囲まれているようだった」と“戦い”を振り返る。
Gacktさんを突き動かしたのは「僕がやらなかったら、誰が出来る?」という強い思い。「ガンダムが支持されているのは、それまでのアニメになかった『君ならどうする?』という問いかけがあるから。ガンダムは、日本のアニメの起源を作り、世界へと広がっていった。富野由悠季監督はアニメのシェイクスピア、ガンダムはアニメの『ロミオ&ジュリエット』であると思うし、クリエイターとして、残さなくてはいけないことやものを指示してくれた」と熱く語る。
「哀 戦士」は、剣がぶつかり合う音、心臓音のようなベース音、銃声などが盛り込まれ、聴き手が持つガンダムの世界が駆けめぐるような楽曲だ。故井上大輔さんの原曲とぶつかりながら、徹底的にアレンジした。「曲を聞いてモビルスーツ同士が戦う場面や、登場人物たちの心境が浮かぶように心がけた」と語る。
原曲の詞は富野監督が「井荻麟」の名で制作したもの。「『♪哀 ふるえる哀〜』の哀は、哀しいという言葉が当てられているけれど、僕はもうひとつ、愛してるの『愛』の意も込められていると感じる。そしてそれは自分から、相手という個人的なものではなく、もっと大きなものを客観的にとらえている。ラストの『♪何を残すのか〜』という問いかけは、ガンダムの中におけるテーマと一緒。歌詞の一部に手を加えたのはすごくつらい作業だったけれど、言葉のとらえ方は時代によって変化するものだから、26年の時を経て、聴き手により届くようにするため必然的なことだった」。
ガンダムについては、「子どもから大人になるに連れ、見方が変わるアニメ。僕は19歳のときにある人と出会い、その人との出会いを経て自分の人生が変わり、自分はこうやって生きていこうと決意をした。迷いを抱えていたそれまでの弱い自分は(主人公の)アムロ。シャアはそれ以降の僕」とあふれる思いを露わにした。
「歌詞には届けたい思いがあり、曲は思い(心)を届ける手段」という。00年からは韓国・中国などアジアでも活動し、国境を越えて思いを伝えようと英語、韓国語、中国語でも楽曲を発表している。今年の10月からは「i
Tunes Store」で全224作品が世界に配信された。
「国と国とを結びつけるのは政治ではなく人の心。僕は『日本人である』ということよりも『アジア人だ』と言いたい。その思いを伝えることは、僕がミュージシャンとして生まれてきた使命と思うし、僕の思いや考えを次の世代にも伝えていきたい」とその瞳は世界を見据えている。
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