このタイトルからおそらく皆さんが想像しにくい内容のコラム(長い文章なのか)になることをお断りしておきます。例外に洩れず 「ウルトラセブン」の話なのですが…。
ウルトラセブンの14・15話。 初の前・後編物語です。昭和42年43年の年末年始をはさんだ放送でした。ここに登場するキングジョーというぺダン星人のロボットは1999年に製作された『ウルトラセブン最終章』の第5話『模造された男』にも30年の時を経て再登場します。余談が長くなってしまいました。とりあえず、ストーリーとその劇中セリフを記載します。本題はその後です。
物語の核となるコンセプトは、地球からペダン星に打ち上げた観測ロケットを、ペダン星人が「地球人の侵略」と考え、地球に報復するというストーリーです。
スパイ・ドラマ風に演出された前編は、外国人役者(男性と女性の二人。しかも吹き替えはルパン三世と同じ人!)が登場し、子供番組らしからぬ雰囲気がいっぱい。敵と味方(ペダン星人と地球人)と思っていた二人の正体が、実は敵味方逆だったという物語展開で気分一転。そこに合体メカの巨大ロボット・キングジョー(当時は画期的)が登場。見るからに凄く強そうなロボットが暴れ始める。ああっ、防衛センターが危ないという場面で間一髪、何処からともなくセブンが登場。
はたしてウルトラセブンもキングジョーには力負けをしており、しかもあらゆる武器が通用しない。次第に形勢不利となって行くセブンの危機姿で後編に「つづく」。絶体絶命のセブンの姿に当時の子供たちは気が気ではなく、このまま年をこすなんて…という気分だったかと思います。ちなみに私はまだ生まれていませんでした。この半年後の6月28日に生まれました。
年が明けて後編が放送されました。
ペダン星人はキングジョーを分離し、一旦退却。各メカは宇宙船となって空に姿を消した。今し方まで防衛センターが破壊されるのを恐れていた土田博士は「素晴らしいメカニズムだ!」と敵の科学力を感嘆。
見所は何と言っても地球人にコピーした宇宙人同士の対話・即ちダン(セブン)と女性科学者ドロシー・アンダーソン(ペダン星人)との「話し合い」。向かい合った二人の宇宙人は、互いに僅かに微笑む。対話を採録!(以下セブンはダン=セブン。ドロシーはドロシー=ペダン星人)
セブン 「さすがはペダン星人だ。我々をまんまと罠に陥れるとは…。」(微笑)
ドロシー 「ウルトラ警備隊に宇宙人がいるとは知らなかったわ。ウルトラセブン、どう?私達の味方にならない?地球はいずれ私達のものだわ。その方が身のためよ!」
セブン 「断る!僕は地球の平和を守るために働くんだ!」
ドロシー 「地球が平和なら、他の星はどうなってもいいと言うの?」
セブン 「地球人は、ペダン星を侵略するつもりはないんだ!あのロケットは、単なる観測ロケットだったんだ!」
ドロシー 「観測?ハハッ、いかにも立派な名目だわ。でも何のための観測なの?それは、いずれ自分達が利用するために、やっていること。その手には乗らないわ。」
セブン 「そうじゃない!我々地球防衛軍の本当の目的は宇宙全体の平和なのだ。」
ドロシー 「そう考えているのは…ウルトラセブン、あなただけよ。」
セブン 「なにっ?」
ドロシー 「人間はずるくて、欲張りで、とんだ喰わせ者だわ。その証拠に、防衛センターではペダン星人を攻撃するために密かに武器を作っている。」
セブン 「それは、お前達が地球の平和を乱すからだ。」
ドロシー 「それはこっちの言うことよ!他人の家をのぞいたり、石を投げたりするのはルールに反することだわ。」
セブン 「…なるほど、地球人も確かに悪かった。こうしよう。僕は今度の事件を平和に解決したい。ウルトラ警備隊は、ペダン星人と戦うための武器の研究を中止する。そのかわり、ペダン星人も地球から退却してほしい。」
ドロシー 「宇宙人同士(この場合は地球人を含まない意味)の約束ね。」
セブン 「そうだ!」
ドロシー 「分かったわ。あなたを信じることにする。私達の誠意の印として、本物の私…つまり、ドロシー・アンダーソンを返すわ。」
素晴らしいハッピーエンドと思いつつ、物語は全てがひっくり返る。
宇宙船内のペダン星人は「こんな美しい星は初めて見た!」と言って約束を破り、ドロシーの記憶を消してから地球人側に返し、ペダン星に地球攻撃指令を出す。地球に迫り来るペダン星人の宇宙船団!!
「みんな、何を疑っているんだ!まず相手を信じることです。そうでなければ、人間は永遠に平和をつかむことなんか出きっこないんだ!」と力説したダンの立場がない。面目丸潰れ!土田博士には皮肉まで言われちゃうし、主な視聴者である子ども達の情操教育に非常に悪いのでは???
結局キングジョーは新兵器で爆破され、逃げるペダン星人もセブンのワイドショットで宇宙船ごと爆破されてしまう。だが「宇宙人同士の約束」がとても感動的だっただけに、この物語転換は疑問が残りました。
「今回の事件は地球人にも責任がある」という教訓的なエピローグを用意した。「それでも何故?」と思ってしまう。。もしかしたら第8話で今の地球人は「信頼し合ってない」という内容のメッセージだったのですが、それを他の星の人との関わりに置き換えたメッセージだったのか…。
ストーリーはちょっと置いて、先ほどのダンとぺダン星人の会話(ぺダンは騙すつもちだったのでしょうが、それは本題ではありません)みていきましょう。ドロシーの「地球が平和なら、他の星はどうなってもいいと言うの?」というのも、なかなかですがこれも今回の本題とは関係ありません(フェイントかよ!)。
これです。 「地球人は、ペダン星を侵略するつもりはないんだ!あのロケットは、単なる観測ロケットだったんだ!」
それに対して、 「観測?ハハッ、いかにも立派な名目だわ。でも何のための観測なの?それは、いずれ自分達が利用するためにやっていること。その手には乗らないわ。」
という部分です。
私たちは時々(年中)迷惑をかけていいるつもりはないのに、かけてしまっていることがあるかと思うのです。この場合はお互いの認識の違い『観測と侵略(自分たちが利用しようとすること)』があって、ぺダン星からの武力攻撃が始まってしまったんでしょうね。
ウルトラセブンの話じゃなくても、(変な表現ですがご了承ください) お互いの権利や領土などの範囲の認識の相違での誤解というのもたくさんあるかと思います。
子供の頃、多摩川の川原で遊んでいるとゴルフボールが落ちていました。友達とラッキーと思い、拾い(貰ってしまうという意味です)ながら、周りを見るとまだ何個も落ちていました。6個くらい拾った時におじさんが『それは叔父さんのだから〜』とかけてきました。僕たちは『チェ』と思いながら(でも人の持ち物でしょ???・笑)。返しました。
本当は危ないから川原ではゴルフの練習などはしていけないことになっているので、『落ちていたもの』と認識していました。でもおじさんには『(当たり前だけど)自分のボール』ですよね。その話が大きくなるとウルトラセブンの『ウルトラ警備隊西へ』のようなことになってしまいます。
最近、起こったことからこの36年くらい前のウルトラセブンを思い出しました。ちなみに須賀川のウルトラマンショーでセブンを一度倒してしまって、会場から落胆の声があがっていた時の相手はこのキングジョーでした。
この文章も認識の違いから、読んだ人によってまったく違う解釈をしてしまうのでしょうか…。でもそれぞれ違う解釈でいいのかなとも思いました。
長い文章にお付き合いくださいましてありがとうございました。
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